魔女狩り



魔女狩りの記録は恐ろしく野蛮で、秩序は地に堕ち、宗教の仮面を被った不浄極まる狂気。
そして魔女狩りを行う人間の知性は、獣性を容認するまでに堕落していった。
魔女狩りこそ史上最も多くの人を巻き込み、最も長期に渡って続いた、最もおぞましい事件。



    
魔女を処刑台へ導くきっかけの殆どは「魔女かもしれない」という噂。

    一度、魔女という噂を立てられれば逃げる術は無く行き着く場所は決まったも同然だ。

    何故なら、魔女の犯罪は他の犯罪とは違い世間の噂の信憑性を詮索する必要は無かった。

    魔女の罪は、証人として喚問された法律学者でさえ立証が困難な程の大罪だとされた。


    魔女を摘発するもう1つの方法は、「密告」。

    密告は日常的に行われ、昨日魔女を密告した者が明日になれば魔女として密告される。

    子供が親を・妹が姉をと、家族を密告する事もあったのだから。





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魔女の摘発



   異端尋問官らが被告達に与えた尋問はこのようなモノだったという。

    「魔女になってどの位経つのか?」

    「何故、どうして魔女になったのか?」

    「悪魔にどんな誓いを立てたか?」

    「サバトには他に誰が参加していたか?」

    「誰にどんな危害を加えたか?」

    「共犯者は誰か?」

   そして、恐ろしい拷問道具の並ぶ部屋に連れ込まれる。
   自分は無実だとどんなに主張しても、彼らは耳を傾けようとしない。
   そんな悔しさと、殺されるかもしれないという焦りでパニックに陥る。
   最後に訪れる拷問という決定打により、自分は魔女だと自供するしかなくなる。
   数世紀もの間、魔女の自供はその殆どが同じような内容だった。


   異端尋問官は魔女に悪事を自供させるだけでなく、その仲間をあぶり出す事も行う。
   1人の魔女が捕らえられると必ず何人もの魔女が摘発される。
   拷問という地獄の苦しみの中、兎に角誰かの名前を挙げなければソレは永遠に終わる事はない。

   こうして捕らえられた者は、同じように拷問と自供を強いられ
  「魔女」の数は芋蔓状態に増えていく事になった。





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魔女の認識方法

 
  
針刺し

 魔女は悪魔に、魔女としての印をつけられているのでその印が身体のどこかに残っているはずだとした。 被告を裸にして体中の毛を剃り落とし隅々まで点検させられた。
 魔女の印は感覚が麻痺しているとされ、その箇所を針で突き刺し探し出す。
 被告の瞼の裏から舌の裏まで体中を針刺しの拷問を受ける。

 また、魔女発見業者の中には突き刺すと針が柄の中に引っ込む針を使う者もいた。
 この業者にかかれば痛みという苦痛は避けられても、確実に処刑台へとの近道を辿る事になるのは
 いうまでもない。


  水攻め

 魔女は水に拒否されるとされた。つまり水に浮くという事だ。
 被告の手足を一緒に縛り水の中に放り込む。

 もし浮かび上がらなければ無罪、もし浮き上がったら魔女という証拠になる。
 どちらにしても、浮かなければ溺れて命を落とし浮けば魔女。

 人間は水に浮くのだから、どう転んでも結局は助からない事になる。



処刑方法

 
 魔女とされた者は、大半が火炙りに架せられる。

 方法は2つ。
 絞殺されてからの火刑と、生きながらの火刑。

 どちらも結果は同じだが、残酷さにかけてはかけ離れている。
 意識があるままに焼かれる事は、想像を絶する苦しみだったに違いない。皮膚は焼け落ち骨が剥き出しに
 なっても、意識だけは残っているのだから。生きながらの火刑の場合、絶命するまで半時間以上も
 その苦しみを味合わなければならなかったという。

 魔女狩りが行われた全期間を通し、どれだけの数の人々が焼き殺されたかはその正確な数を知ることは
 出来ない・・・・

 魔女裁判では、処刑される魔女の全財産を没収する事が出来た。
 魔女狩りが此処まで盛んになった理由の1つとして、この財産没収が異端審問官の懐に入る事に
 なっていたからだともいう。

 捕らえられた魔女の財産は徹底的に調査され、懸命に貯金した現金・不動産は勿論、
 魔女が人に貸し付けていた債権も免れる事はなかった。
 異端審問官達は魔女に代わって、借金を徴収しに街を回った。

 更に、魔女裁判にかかる費用もこの没収財産から差し引かれ、絞殺される際に使われる縄や
 火刑に使用される薪の費用まで全てこれらからまかなわれた。



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